「歩道を走っていいなら、ある程度のスピードは出してもいいのでは?」
この感覚、実は法律の前では通用しません。
自転車が歩道を通行できる場合は、道路交通法第63条の4に定められています。しかし条文は“許可”だけを与えているわけではありません。むしろ強調しているのは“義務”です。
同条第2項は、自転車は歩道を通行する場合、「歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならない」と定めています。そして歩行者の通行を妨げるおそれがあるときは、「一時停止」しなければならないとも規定しています。
ここでいう「徐行」とは“すぐに停止できる速度”。
単なる減速ではありません。ブレーキに指をかけている状態が前提です。
つまり、歩道を走れるのは“優遇”ではなく強い制限付きの例外”なのです。
そもそも歩道は、法律上は歩行者の空間です。自転車は軽車両。原則は車道通行です。第63条の4は、高齢者や児童などがやむを得ず歩道を使う場合の調整規定にすぎません。
「歩道だから安全」という発想は、構造的に誤解です。
歩道では歩行者の動きは予測しにくい。立ち止まる、急に方向を変える、子どもが飛び出す。予測可能性が低い空間では、法が要求する注意水準は上がります。
さらに多くの自治体条例では、「自転車利用者は歩行者の安全を最優先に配慮する責務を負う」と明記しています。条例は刑罰の中心ではありませんが、事故時の過失判断では重要な“社会的注意義務の基準”になります。
つまり、
「法律違反でなければ問題ない」という発想では足りません。
問われるのは、「歩行者優先をどこまで徹底していたか」です。
実務上、歩道での自転車事故は、自転車側の過失が重く認定されやすい傾向があります。なぜか。歩行者は“最優先の保護対象”だからです。これは横断歩道だけの話ではありません。歩道全体がその思想で設計されています。